招魂社でアーメン

『近代とホロコースト』との関連で『逆説の軍隊』(戸部良一、『日本の近代9』、中央公論社)を読んでいるのだが*1、ちょっと考えさせられるエピソードが紹介されている。
明治政府が当初フランスの軍制をモデルに陸軍を整備した(海軍はイギリスがモデル)ことは比較的よく知られているが、当初は授業をすべてフランス語で行ない、地理や歴史もフランスのそれが教えられていた、というほど徹底したフランス化だった。なにしろ、靖国神社の前身である招魂社の参拝に際して、フランス語の号令でカトリック式の礼拝をしていたのだそうである(87頁)。上からの近代化が始まった直後の、短期間のエピソードであるとはいえ、靖国神社の性格を考えるうえで示唆的なはなしではある。

*1:というと語弊があって、たまたま古書店で見かけて買い、冒頭部分をぱらぱらと読んでいると問題として接点がありそうだったので同時並行で読むことにした次第。後進国にままあるように、日本においても軍隊は近代化のトップランナーだったにもかかわらず、やがて近代化の成果を反故にするかのような愚挙に及ぶ。これを日本の近代がはらむ「逆説」として理解しよう…というねらい。