ドイツ連邦軍兵士の「記念写真」スキャンダル

asahi.com 2006年11月01日21時27分
兵士の頭蓋骨問題が深刻化 独検察捜査、政界でも対立


 アフガニスタンに派遣されたドイツ連邦軍の兵士が、人間の頭蓋骨(ずがいこつ)と一緒に記念撮影した問題が深刻化している。撮影時期や所属の異なる兵士の写真が独メディアで次々と公開され、検察当局が死者を侮辱する罪などで本格捜査に乗り出した。政界では与野党間や連立与党内の対立にも発展している。


 独大衆紙ビルトが10月25日付で、アフガニスタン国際治安支援部隊に派遣された兵士数人が頭蓋骨を手にするポーズ写真などを掲載したのに続き、31日までに地元テレビなどが別の兵士の写真を次々と公開した。


 骨にピストルを突き付けたり、骨を並べて文字を作ったりしたショッキングな写真は現時点で約20枚に達し、独国防省の緊急調査では少なくとも計23人の兵士の関与がほぼ特定された。このうち1人は「やらなければ『腰抜け』と周囲に見下されると思った」とビルト紙に証言国防省は幹部らの関与があったかどうか事情聴取を進めている。
(後略 強調引用者)

強調しておいた箇所は、戦争犯罪が散発的なものではなく広がりを見せる際の、ほとんど普遍的な条件ではないかと思われる。旧日本軍兵士の手記にもこのような心境の吐露を見かけることがあるが、兵士ばかりでなく下級将校も同様なプレッシャーに晒されることがある。小隊長クラスの下級将校は古参兵や下士官より若く、実戦経験に乏しいことが多いので、新任の小隊長がやってくると「据え物斬り」をやらせて「お手並み拝見」となることがあった。うまく斬ることができれば「ほう、新しい隊長さんはなかなかやりますな」となってその後の指揮もうまくいくが、ためらったり失敗すると以後舐められっ放し、ということになる。小隊長が兵士の蛮行を抑えようとしても、中隊長や大隊長の後押しがなければ効果はなく、「後ろ弾」を恐れてなにも言えなくなる…という構図である。したがって、師団長や連隊長といったレベルの指揮官が戦争犯罪に対してどのような態度をとるかは非常に重要であるし、戦争犯罪が発生したらなるべく早急に処罰して基準を示すことが必要となる。ソンミで虐殺を止めた米兵の功績が公式に認められたのは、30年もたってからのことだった。軍隊の論理では困難ではあろうが、こうしたケースをやはり早期にとりあげて公式に顕彰することもまた、戦争犯罪への抑止となる。