グアム戦犯裁判において裁かれた性暴力の事例

ハムニダ薫さんのエントリで、およびyamaki622さんのこのエントリでもとりあげられている事例、グアム島アメリカの市民権を持つ現地の17才の女性を日本軍の将校が慰安婦としていた、というよりも端的に拉致監禁して常習的に強姦していたと言うべき事例で拉致を実行した在留邦人が起訴され、有罪(死刑→重労働15年)となった事例…というのは、多分林博史さんの『BC級戦犯裁判』(岩波新書)、146-147頁で言及されているものではないかと思います。
もしそうだとすれば「新事実」というより「これまで注目されていなかった事実」にすぎないとは言えますが、他方で報道内容についてはすでに日本側研究者によって確認されていた、堅いものだということができましょう。
林教授によればこれ以外にも、将校用慰安所で働くよう一人の女性を脅した事件でも起訴されていたが、「事実認定は認めながらも、軍事委員会が適用するグアム刑法を間違ったという理由」(147頁)で無罪となった事例があるとのこと。ここからわかるのは、グアムでの軍事裁判が連合国による軍事裁判の中でもかなり公正なものであった*1こと(この点、および「グアム刑法」で裁かれたという点については同書86頁に記述がある)、そして(おそらくは)軍政の担当者が在留邦人に「女を世話しろ」と強要し、この在留邦人が現地の女性に強要したのであろう…という事件の構図だといえましょう。

*1:被告の観点からすれば。被害者側から見ると、訴追および断罪に消極的な法廷だった可能性は否定できない。