「皇国史観」について2冊


前者はしばらく前に入手して全体の5分の2くらいまでは読んでいるのだが、他のことに追われてなかなか読み終われず。先日、書店で後者(未入手)と並べられているのをみて「そういえば朝日の書評で一緒に取りあげられていたな」と思いだした次第。問題の書評はこちら(魚拓)


『「皇国史観」という問題』の第一章は「戦後における「皇国史観」をめぐる議論の展開」と題されているのだが、実のところ「何をもって「皇国史観」と呼ぶのかは、じつはかなり曖昧」であると指摘(「はじめに」、2頁)し、「「皇国史観」とは何であったか、という基本的な問題に立ち返った上で、特に十五年戦争期(一九三一〜四五年)における「皇国史観」とはいったいどのようなものであったのか、ということを、同時代における具体的な言説に即して検討することを課題」とした、としている(同所)。人口に膾炙したと言ってもよいこの表現の意味が実は「曖昧」であるというのは、門外漢にとっては意外というしかないが、戦後しばらくの歴史学は当然ながら戦前を知る人々によって担われていたがゆえに、用語の定義が改めて問題にされることはなかったというのはなるほどあり得るのかなぁ、と。
なお、昆野氏の研究についても長谷川氏は「近年の注目すべき研究」として言及しているので(42頁)、時間がとれたら読み比べたいところ。