たった5.8%

 【北京=佐伯聡士】首脳外交は活発だが、中国製の冷凍ギョーザ中毒事件など「食の安全」への対応が不十分なことから、日本人にとっての中国の印象は改善されない──こんな結果が、日本の「言論NPO」と中国の英字紙「チャイナ・デーリー」が両国で今年5、6月に実施した世論調査で明らかになった。
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 一方、「関係発展を阻害する問題」としては、日本側では「中国産品の安全性」が46・2%と最高。中国側では「領土問題」が49・2%と最高だった。中国産食品の安全性をめぐっては、「不安を感じる」と答えた日本人が94・8%、中国人側も69・9%となった。
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日本側の調査主体である「言論NPO」なる組織について私は何も知らないので、この調査の科学的な妥当性については「読売新聞が報じた」という事実をもとに暫定的に評価しておくことにする。それはさておき、見出しでも毒餃子事件の影響の大きさが強調されているのだが、これに対して(主として日中関係に重点を置いた調査だということを考えても)人権問題への関心は低いようである。調査の詳細な結果はこちらで公表されているのだが、上の引用中にある両国関係の「関係発展を阻害する問題」という設問に対する回答(3つまでの複数回答可)で「中国の人権問題」を挙げたひとはなんと5.8%しかいなかったとのこと。しかし政府や社会の人権意識というのは多方面の政治的意思決定や経済行動等々に影響を及ぼすファクターではないか。人権意識の高い社会と低い社会のどちらで、有害物質が食品に添加される(混入する)事件が起きやすいだろうか。拉致問題の解決にはなんらかのかたちで中国政府の協力が必要であることは言うまでもないが、中国政府の人権意識がもっと高ければより協力はとりつけやすくなるのではないのか? チベットウイグル族と漢族との衝突事件はこの調査が行われた時点ではまだ起きていなかった)で起きていることは日中関係にはなんの関係もないというのだろうか?
「中国の人権問題」への関心の低さは、日本社会の人権意識の水準を映しだしてもいるのだろう。