日中歴史共同研究委員会、報告発表へ

 日中両国の有識者による「日中歴史共同研究委員会」(日本側座長=北岡伸一・東大教授)が24日にも最終報告をまとめ、このうち「総論」を発表することが明らかになった。


 時代ごとに担当委員が執筆した論文を盛り込んだ「各論」も近く公表される見通しだ。


 ただ、南京事件の犠牲者数など両国の争点となっている論点を巡っては溝が埋まらず、両論併記になる見通しだ。
(中略)
日本軍が37年に中国・南京を占領した際に起きた南京事件に関しては、中国側は政府の公式見解「犠牲者30万人」を譲らず、日本側も「数万人から20万人まで」など様々な説があると主張したため、両論併記とすることとした。日中戦争についても、日本側は「軍部の一部勢力に引きずられて戦線が拡大した」との見解を示したが、中国側は「計画的な中国への侵略」と結論づけ、かみ合わなかった。
(後略)

両論併記というか、日本側の主張は「数万人から20万人まで」だからこちらも両論併記だと言うこともできそうです。ちなみに日本側の委員(近現代史分科会)のメンバーは次の通り(外務省の資料に基づく)。
北岡 伸一   東京大学法学部教授
波多野 澄雄  筑波大学大学院人文社会科学研究科教授
坂元 一哉   大阪大学大学院法学研究科教授
庄司 潤一郎  防衛庁防衛研究所戦史部第1戦史研究室長
犠牲者数について独自の見解をもってそうなメンバーもいますが、政治的に無難な選択をしたということでしょう。
前々から書いていることですが、旧日本軍の戦争犯罪を強調したいなら他にいくらでも攻めどころはあるし、「軍部の一部勢力に引きずられて戦線が拡大した」という見方は直ちに日本免罪論に結びつくわけではない(むしろまともな当事者能力を欠いた、ダメな国家だったという評価にも繋がりうる)のですが*1、中国が東京裁判サンフランシスコ講和条約とを戦後の国際秩序の正統性の源泉と考えていることがこの2点について「譲れない」という態度に繋がっているように思われます。そうだとすると、講和条約を踏まえつつも(特に東アジアの)国際秩序について新たな土台を築くことができるかどうか、という課題が背景に控えていることになります。

*1:そもそも「一部の暴走」か「国家レベルの計画的な行動か」という二者択一ではとらえきれないでしょう。