「龍馬人気」に疑問

昨年の総選挙前に、地元の候補者への「尊敬する人物」というアンケートへの回答をブログのネタにしたことがあったが、そのときにも複数の票を集めていた坂本龍馬。その龍馬人気について10月5日の朝日新聞(大阪本社)朝刊オピニオン欄で野田正彰氏が「龍馬にしがみつくのは成熟拒否の表れ」「軍国主義に利用された過去も。勝手な使い方はもうやめよ」などと批判的なコメントを。

――坂本龍馬はなぜ、こんなに人気があるんでしょうか。
 「龍馬とは青春像そのものです。30代前半で暗殺されてしまって、中年以降がない。もし龍馬が明治維新以降も生きていたら、時代を切り開く若々しいイメージを投影することは難しかったと思います。(後略)」

――いつまでも龍馬のように若々しくいたい。それはいいことなのでは?
 「いえ、成熟拒否です。本来、人は年齢を重ねるとそれなりに成熟していかないといけない。なのに青春像にしがみつくのは、申し訳ないですが、人格的に未熟だからです。なぜ経営者は成熟の歌を自分の部屋に飾らないのか。彼らが龍馬にあこがれるとしたら、それは龍馬という青春にこだわることであり、幼稚さの表れでしょう」

 「(……)偉人をモデルにして、今の言葉で言えばアイデンティファイ(自己同一化)して生きる。それが素晴らしい生き方だとされた。でも、これでは人格が分裂するんですね。理想化した人物と世俗的な自分の生き方が、一人の人間のなかでファンタジーのまま共存する。人格の自然な統合ができません。」

まあ龍馬ファンが龍馬を好む理由も一様ではあるまいから一様に批判することもできないだろうが、実証的に裏付けられる彼の事績に比して人気がありすぎることを気味悪く感じていただけに、こういう批判的な視点がマスメディアで扱われるのはいいことではないかと思う。