「戦争体験継承」をテーマにした番組
「12月8日」以降もポツポツと放映されている戦争関連番組をチェックしていたら、「戦争体験の継承」をテーマにした番組に2つ出会いました。
後者は今月始めに四国エリアで放送されたものが少し遅れて関西エリアでも放送されたものです。
これらを見ると日本の各地で、戦争体験−−それが被害体験に偏しているという限界はありつつ−−を伝える草の根の努力をしてきた市民がいたことがわかって心を打たれます。「ふれてください、戦争に 伝えてください、未来に」の方は明日26日にBS日テレで再放送されます。
戦争関連番組雑感
今年は“太平洋戦争80年”ということで例年よりも冬の戦争関連番組が多かったように感じます。今年が同時に満洲事変90年の年でもあることはほとんど無視されていること、12月8日にはスポットがあたっても12月13日はスルーされていること、そして日本軍による加害を正面から取り上げる番組は稀であること……という限界は例年通りです。というわけで全体としてはとても高くは評価できない今年の「12月ジャーナリズム」でしたが、いくつか印象に残った番組もありました。
まずは自らの罪への自覚から赦免申請書を出そうとしなかったBC級戦犯を扱ったこの番組。例えば捕虜と民間人を殺害したとして終身刑判決を受けた憲兵准尉は、戦犯釈放のための手続きを推し進めていた国の担当者に「事件の非人道的なことに対する深い反省に基づき 赦免を申請する意思はない」と語ったという。また捕虜殺害でやはり終身刑となった海軍の兵曹長は「いかに上官の命令によるものであったとはいえ 何の恨みもない人の生命を自らの手で奪ったことに対し 深く悔悟しており自ら進んで申請することを躊躇」していると述べたという。これが例外的なケースだったことは言うまでもないことだが、「命令」を逃げ道とせずに自らの行為に向き合おうとした戦犯がいたことはもっと知られてよいのではないか。
番組の後半で登場する吉田裕さんのインタビューがこちらに掲載されている。また15日までは「NHKプラス」で見逃し配信されている。
もう一つ印象に残ったのはこちら。
地元住民と亡くなった米兵の遺族の双方を若いアメリカ人ジャーナリストが取材。撃墜を生き延びた飛行士が民間人によって殺されてしまう事例などもあったが、ここでは沖縄戦で息子を失ったばかりの市民が息子と同年輩の飛行士を捕らえ、自宅でイチゴをふるまった……といったエピソードが紹介される。もっとも憲兵隊に引き渡された生存者は一人も終戦の日を迎えられなかったのだが……。こちらは17日まで見逃し配信中。
「遺された声〜横井庄一の“戦争”〜」
先日、11月14日に NHK 総合の「目撃!にっぽん」枠で放送された「遺された声〜横井庄一の“戦争”〜」を録画して視聴しました。
まだ存命の妻へのインタビューや帰国の翌年に録音された横井さんの証言を軸とした構成。

証言から、軍の上層部にとって自分の存在は都合が悪いと横井さんが考えていたことがわかります。


当初、グアム戦について積極的に証言するつもりだった横井さんが口を閉ざすようになった横井さん。

その横井さんが口を閉ざすようになった経緯について、当時取材にあたった中日新聞の元記者が証言。横井さんが「民兵を射殺した」と証言したのです。


しかしこの証言が報道されると横井さんは発言を翻します。県の援護課が介入した可能性を否定できません。

元記者は当時の自分の取材姿勢を振り返り、踏み込んで話を聞かなかったことを後悔しています。

研究者も、当時の日本社会に横井さんの戦争体験に関心を向けるような意識がなかったことを指摘していました。

厚生省援護局による聞き取り記録の開示を求めると、民兵を射殺した時期に当たる部分は黒塗りでした。


日本社会が横井さんの体験に対して持続的に関心を向けなかったことが沈黙の背景出会った、と伺わせる証言をしています。


横井さんが帰国した時、私はまだ小学生でしたが、メディアが大騒ぎしていたことは記憶にあります(多くの小学生が「恥ずかしながら……」を真似したものでした)。しかし「その後」についてはほとんど知る機会がありませんでした。日曜日の早朝という見逃しがちな放送をたまたま見つけることができて幸運でした。
NNNドキュメント'21 10月3日放送回
「国民の歴史」を疑えない「複眼」
「7月7日」や「12月13日」とともに日本のメディアでは軽視されている「9月18日」ですが、今年は90周年ということもあってか『朝日新聞』が社説で取り上げています。そのこと自体は評価したいと思いますが、内容はといえば……
まず「だが日本では、この日はそれほど意識されない」「中国との戦争がいつ始まったのかを答えられる学生はあまりいないという」といったあたりから引っかかります。例年、中国で式典が開かれたことくらいしか記事にしてこなかった自社の姿勢をまずは問うてみるべきではないでしょうか。
しかし最悪なのは次の部分です。
その際に不可欠なことは、自国だけでなく、関係する他国の目線でも過去を顧み、思考することだ。当時の自国の行動と思惑が他国にどう映り、なぜ誰も望まぬ破局に陥ったか。
「複眼的な歴史観」を説いておきながら“自国の目線”なるものは当然視しています。「複眼」というのならばまっさきに疑わなければならないのは“自国の目線”であるはずです。
このいかにも『朝日新聞』らしい限界は10日前のこの社説にも露呈しています。
「日本対韓国」という日本の右派が設定した土俵にのっかり、「被害者の救済が原点だ」を裏切る内容でしかありません。2014年の「検証」特集にあたって結局は腰砕けとなり「慰安婦」問題に関する言論状況を著しく悪化させたことへの反省もありません。
21年夏「戦争」関連番組感想
オリンピック中継に埋もれつつ、この夏もNHKを中心にアジア・太平洋戦争関連の番組がいくつか放送され、一部をのぞいて録画・視聴しました。あいかわらず被害体験中心の番組が大半でしたが、そのなかでも「“玉砕”の島を生きて〜テニアン島 日本人移民の記録〜」は「集団自決」に対する軍の深い関与を訴える証言がとりあげられていました。
9月2日に再放送予定です。
加害の側面に関して突出していたのはやはり「感染症に斃れた日本軍兵士 マラリア知られざる日米の攻防」、特に後半でしょう。
多数の兵士が戦病死したこともある意味では日本「軍」による加害と言えるでしょうが、後半では先日ご紹介したばかりのインドネシアにおけるワクチン禍がとりあげられ、『世界』8月号に寄稿されていた倉沢愛子さんも登場しました。こちらのインタビューでも倉沢さんがこの問題について触れています。
テレビではなく新聞記事では8月最後の日の今日、朝日新聞DIGITALによい記事が載っていました。
「(インタビュー)満蒙開拓の「真実」 満蒙開拓平和記念館館長・寺沢秀文さん」というタイトルでも同じ内容のものが公開されています。