上杉隆、「靖国「A級戦犯合祀」最大の根拠「祭神名票」を厚生省が取り消していた!」
『週刊文春』の9月7日号に載った記事。
まずは背景をば。戦前においては、「誰が靖国に祀られるか」は当然国が決定した。だが、新憲法のもとでは国が靖国に「○○を祀れ、△△は祀るな」と指示することはできない。他方、靖国側としてはその正統性を国家に求めたいから、一宗教法人が勝手に合祀者を決めた、ということにはしたくない。「戦争による公務死に該当するか否かは靖国神社当局が勝手に判定しうるところではありませんので」(靖国神社社務所発行のパンフレットより)という理由で、国による認定が必要だ、ということになる。そこで、恩給法・援護法に基づき国が調査した戦没者氏名を靖国に通知する「便宜的方法」として考えられたのが「靖国神社合祀事務協力」である、というわけ。これにより厚生省から靖国神社へ「祭神名票」が送られることになった。
ところが、上杉氏が発掘した文書によれば、昭和46年に厚生省が「靖国神社合祀事務協力」を一方的に打ち切っていた、というのである。恩給法・援護法にまつわる通知のなかに組み入れ、ことばもぼかすことによりカモフラージュされ、「すぐには判明できないように整えられていた」、という。上杉氏は、靖国神社合祀事務協力が憲法の政経分離条項に抵触することを危惧した厚生官僚が、あとから事態を糊塗しようとしたのであろう、としている。
上記文書は「昭和31年4月19日から同45年8月4日まで」の、靖国神社合祀事務協力に関する「諸通知」を廃止するとしているのだが、A級戦犯の祭神名票が送られたのは昭和41年。合祀されたのは昭和53年である。ところが46年に41年の「通知」が廃止されたのだから問題の祭神名票は効力を失い、「靖国神社側が主張してきたA級戦犯合祀の行政の支えが失われたことになるまいか」、と上杉氏は問いかけている。
フォローアップの記事、研究が待たれるところであるが、もともと国としては正面切って「誰を祭神とするかに国が関与します」とは言えるはずがない。靖国側もことを曖昧にしておけばよかったのに(例えば、戦没者名簿を二次的に利用しただけ、などと)、「国が決める」というところにこだわったため、厚生省の側の腰が引けてしまった、ということなのだろう。
上杉氏本人のブログがあり、そこでこの件について書いてありました。