そもそも「BC級戦犯」って?

昨日取り上げた田中宏巳の『BC級戦犯』では「人道に反する罪」にふれる戦犯のうち「士官」がB級、下士官以下がC級とされた(ただしこの区別はあまり意味がなかった)と説明されていたのでびっくりした。極東国際軍事裁判所条例ほかがa項で平和に対する罪、b項で「通常の戦争犯罪、c項で人道に対する罪を戦争犯罪の類型として規定し、いわゆるA級戦犯(B級に属する訴因でも起訴されている)が東京裁判で裁かれたこととの対比で、残りを一喝して「BC級戦犯」と呼ぶのだ、と考えていたからである。しかも日本の戦犯裁判では「人道に対する罪」は独立した訴因として扱われていないので、BC級と言っても実質はB級、だと考えていたからである。
ところが、『法廷の星条旗』(横浜弁護士会日本評論社)を読んでいて興味深い記述を発見。

では、どうして、規定と違った分類が一般化したのであろうか。それは、連合国側の説明からきている。昭和二〇年十二月十五日付『朝日新聞』東京版は、連合軍法務部長カーペンター大佐談として、「犯罪者に三種」という見出しをつけて、次のように書いている。「B級というのは山下、本間将軍のごとき軍指導者を指し、C級というのは殺害、虐待、奴隷行為などの犯罪を実際に行った者を言い、A級というのは東條首相のような政治指導者を指し、これについての裁判は、キーナン首席検事がこれにあたる。」これによると、平和に対する罪をおかした者がA級、通常の戦争犯罪を犯した軍指導者がB級、実行者がC級ということになる。

同様の分類は、横浜裁判での検察官の冒頭陳述にも見られるとのことである。カーペンター大佐の談話は極東国際軍事裁判所条例ほかの規定に一致しておらず、どのような根拠なのかわかりかねるが、「命令者をB級、実行者をC級」としている点で田中宏巳の説明と近い。また、「最も責任のある者」の意味で「A級戦犯」を用いるのは本来誤用とよく指摘されるわけであるが、カーペンター大佐の談話を読んだ日本人がA〜Cは責任の重さによる分類、と理解したとしても無理はなく、それなりに根拠のある用法だとも言えそうである。


横浜弁護士会BC級戦犯横浜裁判調査研究特別委員会、『法廷の星条旗 BC級戦犯横浜裁判の記録』、日本評論社、についての情報は随時この下に追記します。やっぱり、別にエントリを立てることにしました。