『靖国戦後秘史』

2006年の8月6日から19日まで毎日新聞朝刊に連載された「靖国〜『戦後』からどこへ」に加筆して単行本にしたもの。第一部が「A級戦犯を合祀した宮司」、第二部が「A級戦犯を合祀しなかった宮司」と題されているように、前半では筑波藤麿宮司松平永芳宮司の経歴、人となりなどを関係者の証言に基づき対比することによって、A級戦犯が合祀された経緯を明らかにする。第三部は「戦後の慰霊の行方」。現在の靖国神社(および支持者)が拠り所にする教義の根の浅さ、保守派内部の分裂など、小泉時代の表向きの威勢のよさに反してある種の空洞化が起きつつあることが指摘される。「ヤスクニ・バッシング」から「ヤスクニ・パッシング」みたいな。
私にとってはA級戦犯合祀もそれに到る経緯も二次的、三次的な問題にすぎないと思っているので、本書を題材にして靖国神社のあり方を云々しようとは思わない。むしろ靖国支持者にとってこそ読む価値のある本だということになるだろう。自分がなにを支持しているのかを改めて確認するために。