『グアムと日本人』『アジア・太平洋戦争』『再現 南京戦』

週末の買い物。ここでのblackseptemberさん、Jodorowskyとのやりとりのおかげで目にとまったのがこれ。

  • 山口誠、『グアムと日本人 戦争を埋立てた楽園』、岩波新書

帯には「その島はかつて「大宮島」だった」との惹句。年間100万人にもたっする日本人観光客が忘却している戦争の記憶を掘り起こそうとする試み。
岩波新書の「シリーズ日本近現代史」は第6巻目が刊行になった。

表題は『アジア・太平洋戦争』だが、本書が扱うのは対英米戦開始前後の時期からで、軍事的にも対英米戦争がもっぱら扱われている。第5巻の『満州事変から日中戦争へ』が日中戦争勃発までの時期に焦点をあわせているため、結果として中国戦線での日本軍の軍事行動についてはこのシリーズでは詳述されることがないことになる。武漢攻略以降は戦略的に意味のある作戦はほとんどないとも言えるし、新書一冊で中国戦線まで目配りしつつ、しかも新しい視点を盛り込んでアジア・太平洋戦争について書く、などということは不可能に近いだろうから、このシリーズ構成ではこうなってしまうのもしかたないのかもしれない。各巻の著者のせいではなく企画そのものの帰結だろうが、「忘れられがちな中国戦線」がこのシリーズでも再現されたのは少々残念。
1941-1945年という期間を扱った本の数は相当数にのぼると思うが(先日も古書店で木坂順一郎、『太平洋戦争 大東亜共栄圏の幻想と崩壊』*1を入手したばかり)、参考文献をみれば一目瞭然であるように近年の研究成果も反映されている。例えば41年に始まった戦争は(特に陸軍にとって)まずは対英戦争だったという指摘(9、54ページ)はなるほど、日中戦争と太平洋戦争との連続性を考えるうえで重要である、と思わされた。


東中野センセイの『再現 南京戦』を古書店で発見して購入。売り払った方にお礼申し上げます。ゆうさんの落ち穂拾いでもぼちぼちとやっていこうかと思います。

*1:小学館の文庫版「昭和の歴史」シリーズ第7巻、1989年。