『ヴェトナム戦場の殺人』

デイヴィッド・K・ハーフォード、『ヴェトナム戦場の殺人』、扶桑社ミステリー


MPを主人公とした短編3本を収めた短編集で、著者はMPとして68年から69年までヴェトナムに従軍したという経歴の持ち主。戦場を部隊としている点を除けばまるまるミステリのプロットなのだが、さすがに軍隊だけあって容疑者の身柄拘束が簡単にできちゃう、といった特徴はある。ブログ(本館の方)を始める前に読んでいたので紹介する機会がなかったのだが、白井洋子氏が『ベトナム戦争のアメリカ』で3本のうちの「ホーチミン・ルートの死」を好意的にとりあげていたので再読。
ある米兵の殺人事件を捜査するうちに、主人公は被害者が所属していた部隊による物資横流し事件にゆきあたる。目撃者であるヴェトナムの老婆は当初口を閉ざしていたが、最後に真相を語りはじめる。その理由は…。ネタばれは避けるが、「共感」が決して「敵と味方」という境界線によって遮断されることが決して「仕方のない」ことでも「当たり前」でもないことが主題である、とだけ言っておこう。