藁人形論法の典型(追記あり)

理解しようとする気がない人間は放っておくとして、とはいってもこっちも結局は「理解しようとする気がない」人間のはなしですが。こちらで引用されている「経済/経済学@いちごびびえす」のログより。

なにかと気に入らないものをナチスと同一視するって、バカな欧米知識人じゃあんめえし。
こんな病的なプチブルセンチメンタリズムの逝き着く先は、クメール・ルージュが関の山。

これには「向こうも「何かというとクメールルージュやら文革を持ち出すネオリベめ」と思っていることだろう」というレスがついていて笑えますが、それはともかく hokusyuさんのダイアリを「ホロコースト」とか「アウシュビッツ*1で検索してみればよい。全エントリ数に対する比率からみて、またホロコーストが話題になった経緯からみて、「やたらとホロコーストのはなしになる」「なにかとナチスと同一視している」かどうかがすぐにわかるから*2


あ〜あとひとつだけ書いておこう。HALTAN氏は「左翼やフランス人が懸念するような他者に対する不寛容な雰囲気こそが「言論の自由」から生じているという逆説が存在する国」だとか「アノミーファシズムは「自由」を得てしまった人間たちが自分たちで自ら作り出す(この民主主義の逆説を誰もまだ解決し得ていない)と考えています」といった認識の“独創性”がけっこう自慢みたいですが、こういう認識を持っていてなお「なぜホロコーストが出てくるのかわからない」と考え得る、というのはちょっとわたしには理解し難いですね。


追記

2008年05月28日 NOV1975 言葉 つまり、トリアージとは「誰かを「生きるに値しない命」であると断定する「算術」」だ、ということなのかな…
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080526/p1

もちろん今日、大災害の現場で行なわれるトリアージが「生きるに値しない命」を選別しようとしている、なんてことは言ってません。つか、はっきりと「こういうことを書くと「トリアージをする人間をナチ呼ばわりするのか?」という反応がありそうですが(実際、福耳先生はそう反応しちゃったわけですが)、二重の意味でそうじゃありません」って書いておきましたよね? HALTAN氏といい、なぜこうもはっきり書いてあることを無視しますかね。ただし、トリアージはその起源においては、「早期に戦線復帰が可能かどうか」を基準として「生きるに値しない命」を選別したわけですが。つまり目的の設定次第では、いまでも「生きるに値しない命」を排除する技術たりうるわけです。アウシュヴィッツにおいて誰が〈回教徒〉すなわち「生きるに値しない命」と判断されたか、その判断基準を紹介しておきましょう。フランクルアウシュヴィッツに到着した時に、先に到着していた知り合いに言われた言葉です。

頼むから、これだけはやれ。髭を剃るんだ。できれば毎日。私はガラスの破片でやっている。それとも、最後のパンの一切れをやってでも、誰かに剃ってもらえ。そうすれば若く見えるし、頬が引っ掻き傷だらけでも、血色はよく見える。病気にだけはなるな。病人のように見えるのは駄目だ。命が惜しかったら、労働可能と見られるしかない。靴ずれみたいな、ほんのちょっとした傷でも、足を引きずったりしたら、ここでは命取りだ。親衛隊員たちがそんな奴を見かけたら、こっちに来いと合図する。
(柿本昭人、『アウシュヴィッツの〈回教徒〉』、春秋社、からの孫引き)

こうした努力を放棄するまでに衰弱した人間が〈回教徒〉と呼ばれたわけです。柿本氏のもっとも挑発的な問題提起は、絶滅収容所の(元)囚人たち自身がこの「判定基準」を内面化してしまい、死んでいった者たちを〈回教徒〉と表現することに対して向けられているわけですが。


以下念のため。こんにち大災害の現場で行なわれるトリアージの場合、リソースの絶対的な不足という前提は基本的に疑問の余地がないものです。しかし「リソースの不足」が主張される場合一般についてそれがほんとかというと、これはけっこう疑わしいわけです。「満蒙は日本の生命線」なんてスローガンがもてはやされたことがありましたが、事実は「満蒙」を失っても日本は滅亡しなかったわけです(もちろん戦前と戦後では諸々の前提が変わってはいるわけですが、戦前の日本はせっかく広大な植民地を手にしてもそれを開発する経済力に欠けていたというのが実態で、しかもそのことをきちんと認識していた人間は当時においてもいたわけです)。


こちらの追記部分。相変わらずです。

いや、だから今回の件であなた方のやっていることは、

例えるなら、救急医療の現場に出向いて、医者(fuku33先生)に「そもそも医療の本質とは・・・」「ぶつぶつ・・・」とか医療哲学者(hokusyuさんやApemanさん)が説教するようなもの
2008-05-27■[床屋政談]Apemanさんのエントリに懸命に「接点」を探してみたid:HALTAN:20080527:p1

でしょう?

そんなことにはまったく同意してませんが? そもそも「比喩」として成立してないよな。
で、hokusyuさんのブログをチェックして「やたらとナチ呼ばわり」しているという事実が存在するかどうかを確かめてみろ、って言っておいたんだけど、バカのバカなコメントを引用して悦にいってバカを晒してます。そこ、2ちゃんねるとちっとも変わんないよね。

*1:アウシュヴィッツ」ではなくこちらの表記が用いられてます。

*2:もちろん「そんなことはない」という結論が、ね。ちなみに、私ですら「こんなに少なかったの?」と意外に思ったほどですよ、ホロコーストに言及しているエントリの数。