戦後責任

「戦争の狂気」だけでなく

去る8月15日、毎日新聞は九大生体解剖事件の関係者の証言を掲載しました。 毎日jp 2012年08月15日 「九大生体解剖事件:「戦争は人を狂わす」最後の目撃者語る」 記事中に次のような一節があります。 「軍人と医者が残虐非道なことをしたが、これは事件の本質…

「科学的合理性」と「政治判断」

YOMIURI ONLINE 2012年8月3日 「黒い雨」巡る大雨地域拡大、難しい…厚労相 原爆投下後の広島で降った放射性物質を伴う「黒い雨」を巡り、広島市などが被爆者援護の対象となる「大雨地域」の拡大を求めている問題について、小宮山厚生労働相は31日の閣議後…

偽の論点による偽の反論(の・ようなもの)

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51796333.html 本来であれば改めてとりあげるまでもない愚論なのだが、新宿ニコンサロンでの安世鴻写真展をめぐるニコンの腰砕けの対応(仮処分命令後はむしろ自ら写真展を潰しにかかっているようだが)や、先週末…

「精神的ケア」という欺瞞

本ブログでは「黒い雨」に関する従来の通説に挑戦する研究についていくつか紹介してきました。 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090708/p1 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20100304/p3 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20111122/p1 しかし厚労省は従来の立場を…

早くも予想が的中!

全然嬉しくない的中ですけどね。 「維新の会」が歴史教育をターゲットにするのもそう遠いことではないだろう、と思わされる。 (http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120422/p1) この予想ですが。 朝日新聞デジタル 2012年5月11日 橋下市長ら近現代史学ぶ…

遺棄毒ガス被害訴訟、原告敗訴

中国吉林省敦化市で04年7月、旧日本軍が遺棄した毒ガス5件兵器で被害を受けたとして、中国人の劉浩さん(16)と周桐さん(19)が日本政府に計6600万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は16日、請求を棄却した。小林久起裁判長は「(日本政府が)…

【感想】3月4日放送分「証言記録 兵士たちの戦争」

さる3月4日に2本続けて放送された「証言記録 兵士たちの戦争」シリーズ、「フィリピン・ルソン島 補給なき永久抗戦 〜陸軍第23師団〜」、「台湾先住民“高砂族”の戦争」について。 フィリピン戦線は日本軍が最も多くの戦病死者(餓死者を含む)を出した戦線の…

そもそも「戦後レジーム」なんてなかったんだよ

ネトウヨの相手をしていてとりあげそびれていた一週間前の記事。 asahi.com 2012年1月21日 「靖国戦犯合祀、国が主導 地方の神社から先行」(魚拓) 一昨年には大阪高裁が政府の合祀への関与について「違憲」とする判決を下しており、同じ年には当時の原口総…

大阪空襲訴訟、きょう判決(追記あり)

大阪空襲の被災者・遺族が謝罪と賠償を求めて08年12月8日に提起した訴訟の判決が、きょう12月7日の午後に下される予定です。 http://www.osaka-kusyu.org/blog/2011/07/711.html 追記:悪い意味で予想通りの判決でした。 判決は、旧軍人や軍属は国の指示で戦…

「黒い雨」に関する調査資料の存在、明らかに

原爆傷害調査委員会が1950年代に広島・長崎の被爆者を対象に行なった調査で、「黒い雨」に遭遇したと回答した約1万3000人分のデータを、原爆傷害調査委員会の後身である放射線影響研究所が保有していたことを、各社が伝えています。 朝日新聞や毎日新聞が力…

ニセの論点とニセの二項対立

自民党の参議院議員、片山さつきが「従軍慰安婦」問題について語った「客観的事実」なるものについてはブクマで簡単にコメントしておきましたが、日本の保守派、右派は一体いつになったら客観的現実に直面することができるのでしょう? まあ現実を回避するた…

64年前の虐殺に対して賠償命令

「壊れる前に…」さん経由で。 The Miami Herald, 09.15.11, "Indonesian massacre widows welcome Dutch ruling" (ASSOCIATED PRESS) 他の報道*1も参照すると、オランダ政府は60年代の終わりには事件について公式な調査をしていたようですが、「遺憾の意」を…

日本政府、66年間の不作為

毎日jp 011年9月3日 「太平洋戦争:朝鮮半島出身動員26万人 配属先の全容判明」 太平洋戦争中に朝鮮半島から動員された軍人・軍属約26万人の全配属部隊と配置先が、近代史研究家の竹内康人さん(54)=浜松市=の調査で明らかになった。日本政府が韓国…

あなたが好きなのはどちらのアメリカですか?

掲示板で smtz8 さんから情報提供をいただいた件についてです。 asahi.com 2011年8月14日 「「日本軍性暴力パネル展」始まる 北京郊外で日中共催」(魚拓) このパネル展をとりあげた卑しい記事は次のような論法を用いています。 (……)しかし、中国ウオッチ…

「原爆投下 活かされなかった極秘情報」と堀栄三の回想

6日に放送されたNHKスペシャル「原爆投下 活かされなかった極秘情報」で紹介されていたことのかなりの部分は、番組中にも登場する堀栄三の回想記、『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』(文春文庫)でも語られている。B29が発する電文のコールサイン…

「封印された原爆報告書」ほか

昨年の8月6日に放送されたNHKスペシャル「封印された原爆報告書」が昨晩再放送されていた。日本政府が放射性物質による被曝から市民をいかにして守るのか、その姿勢が問われている*1時である、という観点からも観るに値する再放送だったのではないだろうか。…

「鉄条網とアメとムチ」(放送予定)

7月17日(日)24:50〜(18日00:50〜) 日本テレビ系列 NNNドキュメント'11「鉄条網とアメとムチ 苦悩する基地のまち」 福島第一原発の事故が大変な厄災を及ぼしているが、これまでの基地政策は交付金漬けの原発推進政策と驚くほど構図が似ている。政府は震…

花岡事件「和解」問題、その後

関連エントリ http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080205/p1 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090223/p2 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090809/p1大戦中に花岡鉱山出張所で強制労働を強いられた中国人被害者が鹿島建設を提訴しその後東京高裁での協議により和…

在台湾の被爆者、提訴の方針

asahi.com 2011年5月17日 「在外被爆者訴訟、台湾から初めて提訴へ 遺族含む12人」(魚拓) 広島や長崎で被爆し、台湾に住む被爆者らが、日本から出国した人を対象外とした違法な通達(2003年に廃止)によって援護を受けられなかったなどとして、国に…

大江・岩波訴訟、高裁判決が確定

asahi.com 2011年4月22日 「「沖縄ノート」訴訟 集団自決の軍関与を認めた判決確定」 判決の内容は「原告の事実誤認などの主張は、上告が許される場合にあたらない」として上告を棄却したものですから、各争点について新しい判断が下されたわけではなく、ま…

元捕虜のオーストラリア人、来日

今日(3月5日)の朝日新聞(大阪本社)朝刊は、日本軍の捕虜となり大阪の造船所で働かされていた元オーストラリア軍兵士ジャック・シモンズさんが、66年ぶりに来阪して工場を訪問したことを伝えています。シモンズさんの来日と関連した報道がネットにもあり…

「“朝鮮人軍夫”の沖縄戦」

(実際には2日に書かれたエントリですが、1日付にしています。) 2011年 2月27日 NHK総合 証言記録 市民たちの戦争 「“朝鮮人軍夫”の沖縄戦」 沖縄・糸満の「平和の礎」には447人の朝鮮半島出身犠牲者の名前が刻まれているが、「実際には1万人が命を落とした…

「南太平洋 “軍旗海没” 〜篠山 歩兵第170連隊〜」

2月27日 8:00〜 NHK BShi 証言記録 兵士たちの戦争 「南太平洋 “軍旗海没” 〜篠山 歩兵第170連隊〜」 3年半に渡り、絶望的な消耗戦が続いた東部ニューギニア戦線。ここで日本陸軍史上ほとんど例のない「現地解隊」を命じられ消滅した部隊があります。兵庫県…

ボールは菅政権に投げ返された

今日の朝日の報道ではアメリカのキャンベル国防次官補が普天間飛行場の移設について「我々は再び期限や時期を設けることはしない」「我々は、これは日本の国内問題と認識している」と発言したとされていますが、来日していたゲーツ国防長官はもっと踏み込ん…

「弁護したい」という欲望が認知を歪ませる

http://twitter.com/maji1985/status/24636718896390144 ご存知の方も多いと思いますが、これは韓国政府のサイトに掲載された「慰安婦募集」ポスターが「強制連行」否定の根拠になるとする、ネット右翼の間でたびたび使われている論法です。 http://photo.ji…

国の名簿提供に「違憲」判断

asahi.com 2010年12月21日 「靖国神社への戦没者名提供「政教分離に違反」 大阪高裁」(魚拓) (……) 判決はさらに、国の合祀への関与を検討。(1)旧厚生省が戦後に合祀予定者を決めて神社側に通報した(2)調査費用が国庫負担だった、などの経緯をふま…

「国民」の戦争責任について

cf. http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__101212.html , http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__101215.html 多くの民衆は、戦争と敗戦にいたる過程を「ダマサレタ」という論理でとらえて納得したが、そこには戦争責任をみずからのものとする意識が欠落してい…

「最終的解決」はむしろ現在進められつつある

ツイッターではすでに指摘しておられる人もいるが、念のためこちらでも。「最終(的)解決」という用語は日本の同盟国であったドイツの国家犯罪の(当事者が用いた)婉曲表現であるがゆえに注意を要するものではあるが、戦後補償問題という文脈においてはよ…

「65年目の「遺言」」連載開始

昨日12月5日から朝日新聞朝刊で「65年目の「遺言」」と題する連載が始まった。第1回は名古屋空襲で両足を失った女性への取材。 季節の変わり目や、雨が降る前、両足のつけ根に痛みが走り、生きながらに体を焼かれたあの日がよみがえる。 「死ぬまで戦争に追…

「語り継ぐ戦場」

朝日新聞(大阪本社)夕刊の連載「ニッポン 人・脈・記」は18日木曜日から「語り継ぐ戦場」と題し、残り少なくなった戦争体験者からの聞き取りなどに取り組んでいる若い世代をとりあげています。1回目は「戦場体験放映保存の会」、第2回は「撫順の奇跡を受け…