戦後責任

『故郷はなぜ兵士を殺したか』

一ノ瀬俊也、『故郷はなぜ兵士を殺したか』、角川選書 著者の過去の著作に比べると格段に挑発的な書名なのでちょっとびっくり。日露戦争以降の(ただし重点はアジア・太平洋戦争におかれている)銃後における軍事援護活動――出征兵士の家族への援護、戦死者家…

宗教の自由!

asahi.com 2010年10月26日 「靖国合祀の取り消し認めず 那覇地裁が遺族の訴え棄却」(魚拓) 「国賊神社」とかなんとかいう名前で、宮・軍・政・官・学・財各界の戦争責任者(もちろん名指しで!)が黄泉の国で自分の罪過に見合った期間苦しみ続けることを祈…

「原爆被爆者対策基本問題懇談会」議事録、続報

8月に東京新聞が報じていた「原爆被爆者対策基本問題懇談会」の議事録について、今日の朝日新聞が報じている。 asahi.com 2010年10月25日 「被爆者補償、歯止めありきの議論「財政破綻恐れた」」(魚拓1ページ、2ページ) asahi.com 2010年10月25日 「被爆者…

台湾人遺族のケース

少し前に、1992年になってようやく父親の戦傷死を確認することができた韓国人遺族についての報道を紹介しましたが、台湾人遺族についても同様のケースがあったようです。『現代の理論』の08年新春号(Volume14)は巻頭に今村嗣夫弁護士と高橋哲哉氏の対談、…

映画『おみすてになるのですか』

昨日(29日)の朝日新聞夕刊に、民間の戦災傷害者を取りあげたドキュメンタリー映画、『おみすてになるのですか』が10月2日から大阪市十三の第七芸術劇場で上映される、という紹介記事があった。ネット版にはまだ載っていないようなので他をあたってみると、…

A級戦犯の合祀手続きについて検討会(追記あり)

毎日jp 2010年9月8日 「原口総務相:A級戦犯の合祀手続き検証へ、省内に検討会」(魚拓) この問題については以前エントリを書いたはず、と思って確認したらちょうど4年前の今日だった。 原口一博総務相は7日、靖国神社にA級戦犯が合祀(ごうし)される過…

遺棄化学兵器の廃棄、はじまる

asahi.com 2010年9月2日 「旧日本軍遺棄の化学兵器、廃棄始まる 中国・南京」 【南京(中国江蘇省)=奥寺淳】旧日本軍が中国に放置した毒ガスなどの遺棄化学兵器を廃棄する作業が1日、中国江蘇省南京で始まった。中国国内に約40万発あるとされる遺棄化学…

“靖国=慰霊の場”論の欺瞞

戦没者のすべてが靖国に合祀されてるわけではないとか、靖国に合祀されているのは戦没者だけではない……といったことは繰り返し指摘されてきたが、ここではかつて自民党が成立を目論んだ靖国神社法案をとりあげることにする。靖国神社の来歴ももちろん重要だ…

「英霊か犬死にか」ほか

「薔薇、または陽だまりの猫」さん経由で。 テレメンタリー2010 「英霊か犬死か〜沖縄から問う靖国裁判〜」 原告-崎原「戦死した母が命(ミコト)、神として靖国に祀られていたとは。死者に対する最大の冒涜だ!」 原告-安谷屋「たった2歳の弟が球(たま)部隊…

古森義久氏の自爆芸

JBpress 2010.08.25 「日本の謝罪外交を米国人学者が「不毛」と指摘」 どうせ都合のいいところだけつまみ食いしているに決まっているので、ジェニファー・リンド氏の論文にあたってみました。 https://www.foreignaffairs.com/articles/japan/2009-05-01/per…

どんな関連が?

日付を一日先取りして書いております(8月22日)。 MSN産経Web 2010.8.22 「【from Editor】サハリン残留韓国人って?」 「菅談話」によってまた、亡霊が動き出した。現在進行形だから生霊というべきか。多くの国民が知らないまま、長年、巨額の血…

さらにもう1つのクリーシェ

首相談話をめぐって登場した3つ目のクリーシェは言わずと知れた「いつまで(何回)謝罪すればいいのか!?」である。それこそ「いつまで『いつまで謝罪すればいいのか』と聞かされればいいのか!?」という気分だが。この種のクリーシェを口にする人びとは日…

もう1つのクリーシェ

日韓併合条約が発効した1910年は、帝国主義の時代だった。当時の日本の行為を現在の基準で断罪することは、歴史に対する冒涜だ。この観点からするならば、 政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって とい…

「歴史の評価は歴史家に任せ」

菅首相の「談話」をめぐる反応として予想通り「歴史の評価は歴史家に任せ、政治は慎重であるべき」論が出てきた。そもそも現在の国際関係にも大きな影響を与えている近現代史の評価を抜きにした政治なんてありえないわけだが、おまけにこれを言っているのが…

聾者の被爆体験

昨年放送されたETV特集「障害者たちの戦争」では聴覚障害者や視覚障害者とそれ以外の者との間にある戦争体験の断絶が問題にされていましたが、今朝(10日)の朝日新聞(大阪本社)朝刊には「聞こえなかった被爆 ろう者体験 語り継ぐ動き」と題する記事が掲載…

文書公開の意義

法華狼さん経由で。 TOKYO Web 2010年8月1日 「『受忍論』に異論出ず 『被爆者 ぴんぴんしている人も多い』」(魚拓) 記事ではとりわけひどい部分が紹介されているから……というのはあろうが、「どうせ公開されまい」と高をくくったかのような発言のオンパレ…

「日本と朝鮮半島」第4回

7月25日(日) 午後9:00〜午後9:55 NHK総合 「NHKスペシャル プロジェクトJAPAN シリーズ日本と朝鮮半島 第4回」 “在日コリアン”の法的地位。その原点はGHQ占領期にある。敗戦後“在日”の多くが在日本朝鮮人連盟(朝連)を軸に、民族教育を求めた…

「女性・戦争・人権」学会第12回大会(追記あり)

「女性・戦争・人権」学会の第12回大会が今日、同志社大学室町キャンパスで行なわれました。非会員の参加も可能とのことでしたので、午後のシンポジウム「「女性国際戦犯法廷」10年を迎えて――ハーグ判決実現に向けた課題と展望――」に出かけてきました。パネ…

明日、「慰霊の日」

明日6月23日は沖縄戦で日本軍の組織的抵抗が終了した日付にちなんだ「慰霊の日」だが、今日22日の朝日新聞朝刊「ひと」欄では牛島満第32軍司令官の孫にあたる牛島貞満氏(学校教員)がとりあげられている。氏は『世界』の臨時増刊『沖縄戦と「集団自決」』(…

“戦争の経験を問う”ことについて

以前にちょこっと言及した岩波のシリーズ「戦争の経験を問う」、笠原十九司さんの『日本軍の治安戦――日中戦争の実相』が刊行されたのでいま読んでいるところです。同書では笠原さん自身の先行する業績として『岩波講座 アジア・太平洋戦争 5 戦場の諸相』に…

「持続可能」な駐留!

毎日jp 2010年5月28日 「米国:国際協調を強調 オバマ政権初、安保戦略を発表」 米国の対外政策の礎石は、アジアや欧州などの同盟国との関係と位置付け、中国、インド、ロシアと「より深く、効果的なパートナーシップの構築を目指す」とした。在日、在韓米軍…

遺棄毒ガス訴訟、原告敗訴

毎日jp 5月24日 「遺棄毒ガス訴訟:中国人遺族らの賠償請求棄却 東京地裁」 山田裁判長は旧日本軍が毒ガス兵器を遺棄したと認定。「遺棄化学兵器を日本が処理する」との日中間の覚書(99年)などをふまえ「国はチチハルなど旧日本軍駐屯地付近に毒ガス兵器…

相変わらず問題点がわかってない

msn産経ニュース 2010.5.23 「【安藤慶太が斬る】NHKこそ「人間動物園」ではないのか」 最後にもう一言。こうした歴史を遡っての断罪が許されるなら、TV自体が将来「人権侵害装置」のごとく不当な断罪を受ける恐れは十二分にあるということだ。人を盛ん…

『「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年』ほか

加藤聖文、『「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年』、中公新書 近年、「8月15日」とは日本がポツダム宣言を受諾したことを帝国臣民に公表した日付に過ぎないとしてこれを相対化する(「終戦=8月15日」という認識を問い直す)議論が見られるが、著者はそう…

「日韓歴史共同研究」とナショナル・ヒストリー

先日報告書が発表された第二期の「日韓歴史共同研究」については、まだ第3分科会(近現代)と教科書小グループの目次に一通り目を通して、いくつかの論文を斜め読みした程度なのだが、「日中歴史共同研究」と比較すれば(政治外交史や軍事史以外の)多様なア…

『新・現代歴史学の名著』

関連エントリ 「日中歴史共同研究」執筆者の「歴史認識」論 「説明」と責任(特に後半部分) 樺山紘一編著、『新・現代歴史学の名著』、中公新書 買ってきたばかりでまだ読んでない。ということで実はこの本についてではなく、上の「関連エントリ」で問題に…

ドレスデン市、大空襲について調査報告

毎日jp 2010年3月20日 「ドイツ:ドレスデン空襲、死者は2万5000人−−市歴史調査委」(魚拓) 【ベルリン小谷守彦】第二次大戦中の米英軍によるドレスデン大空襲(1945年2月13〜14日)について、独東部ドレスデン市の歴史調査委員会はこのほど…

「検証 昭和報道」、「靖国参拝」の章

朝日新聞の夕刊で連載されている「検証 昭和報道」の「靖国参拝」の章(全6回)が終わりました。1985年の8月15日に行なわれた中曽根首相(当時)の靖国参拝時の報道について、次のように振り返っています。 当時の靖国関係の記事は、大半が政教分離をめぐる…

「黒い雨」の範囲に関して新説

上のエントリでとりあげた件は「新事実発見、という主張に安易に飛びつくこと」の危険を教えてくれていますが、他方で「よくわかっていて当たり前、と思われていることが以外によくわかっていない」ことの実例になるかもしれない研究報告も報じられています…

台湾人被爆者、提訴へ

昨日の朝日新聞(大阪本社)朝刊に載っていたニュースだが、ネットではあまり流れていないようだ。 大分合同新聞 2009年02月12日 「台湾被爆者が手帳申請」 長崎市の旧長崎医大(現長崎大医学部)に留学中に被爆した台湾の医師王文其さん(90)が、海外で…