文献紹介

『故郷はなぜ兵士を殺したか』

一ノ瀬俊也、『故郷はなぜ兵士を殺したか』、角川選書 著者の過去の著作に比べると格段に挑発的な書名なのでちょっとびっくり。日露戦争以降の(ただし重点はアジア・太平洋戦争におかれている)銃後における軍事援護活動――出征兵士の家族への援護、戦死者家…

「兵士たちの戦争」シリーズ放映予定

10月30日 (土) 午前8時00分〜 BShi 証言記録 兵士たちの戦争 「人間爆弾“桜花” 〜第721海軍航空隊〜」(仮題) 再放送:11月10日(水)午後2時00分〜 BShi http://www.nhk.or.jp/shogen/schedule/heishi_yotei.html 通常このシリーズは月末の土曜日に放映…

「シンドラーとユダヤ人」

「文献」じゃなくてテレビ番組ですが、まあむやみにカテゴリーを増やしても意味がないので。 10月24日(日) 午後10時〜 NHK教育 ETV特集 「シンドラーとユダヤ人〜ホロコーストの時代とその後〜」 シンドラーが救ったユダヤ人たちは、戦後安住の地を求めて…

「貧者の兵器とロボット兵器」

10月15日の朝日新聞(大阪本社)朝刊、「時時刻刻」で、10年目を迎えた*1アメリカのアフガニスタン戦争における「新戦略」がレポートされている。ナンガハル州を担当する軍民混合の「地域復興チーム」の作戦会議でのこと。 この席で、上官がくどいほど兵士た…

『卜部日記・富田メモで読む人間・昭和天皇』

2008年の春に出ていた本なのに、先日書店をぶらぶらしていて初めて気がついた。背表紙くらいこれまでも見ていたはずだと思うのだが、昭和史についての関心が時期的にきわめて偏っていることを改めて自覚させられた(^^; 『入江日記』だって古書店で1〜6巻(19…

『私たちの中のアジアの戦争』

吉沢南、『私たちの中のアジアの戦争 仏領インドシナの「日本人」』、有志社 今年の5月に出た本だが、当初は1986年に朝日選書として刊行されたもの。著者は2001年に亡くなっているので、再刊にあたって加筆されているといったことはない。約四半世紀前の文献…

『「BC級裁判」を読む』その3

本書では過去にこのブログでとりあげた事例もいくつかとりあげられている。例えば「武士道裁判」について、当時の新聞にも「武士道裁判」という表現が「デカデカと」出ていたけれども裁判の争点との関連は薄く、「私は裁判記録を読んで、中村さん〔中村孝也…

『「BC級裁判」を読む』その2

半藤一利・秦郁彦・保阪正康・井上亮、『「BC級裁判」を読む』、日本経済新聞出版社 この本が日経から出ている(ベースになった連載も日経紙上)というのは少なからぬ意義をもつと思うし広く読まれることを祈りたいが、他方で異論を唱えたいところももちろん…

『BC級裁判」を読む』その1

半藤一利・秦郁彦・保阪正康・井上亮、『「BC級裁判」を読む』、日本経済新聞出版社 21世紀の「進歩的文化人」(by 西尾幹二センセ)トリオと日経新聞の井上亮氏(「富田メモ」報道のひと)によるBC級戦犯裁判論。裁かれた事件の類型ごとに章を分けて(序章…

『海軍反省会』

戸高一成編、『[証言録]海軍反省会』、PHP 参考:http://www.nhk.or.jp/special/onair/090809.html 一般の読者にとって決して読みやすい本ではない。どんなに理路整然と話すように見える(聞こえる)人のはなしでも、それをそのまま活字にすると妙なところ…

『海軍反省会』、読みはじめる

昨年NHKの番組で題材となった(http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090809/p2)「海軍反省会」のうち第1回から第10回までを文字起こしして刊行された『[証言録]海軍反省会』(戸高一成*1編、PHP)を読みはじめた。「反省会」は131回以上行なわれたと推定され*2…

ヘイドン・ホワイトと日本の歴史学

8月号の『思想』は「ヘイドン・ホワイト的問題と歴史学」と題する特集。安丸良夫・小田中直樹・岩崎稔の3氏による座談会「『メタヒストリー』と戦後日本の歴史――言語論的転回の深度と歴史家の責任――」をとりあえず読んだ。ホワイトの主著『メタヒストリー』…

『日本軍の治安戦』

笠原十九司、『日本軍の治安戦 日中戦争の実相』、岩波書店(シリーズ 戦争の経験を問う) ひきよせて寄り添ふごとく刺ししかば声も立てなくくづをれて伏す 本書は歌人・宮柊二の上に引用した歌の紹介からはじまっている。自らも歌集を出しておられる笠原氏…

『「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年』ほか

加藤聖文、『「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年』、中公新書 近年、「8月15日」とは日本がポツダム宣言を受諾したことを帝国臣民に公表した日付に過ぎないとしてこれを相対化する(「終戦=8月15日」という認識を問い直す)議論が見られるが、著者はそう…

「輔弼親裁構造」

もう半月ばかりも前のコメントへのレスポンスで恐縮ですが。 ただ、そうは言っても「現に存在した旧憲法」のもとで、必ずしも天皇の信頼のおける閣僚ばかりが 選任される状況でないなかで、いかように振舞っても後世の我々から非難されるような状況における…

『内奏―天皇と政治の近現代』

後藤致人、『内奏―天皇と政治の近現代』、中公新書 先日言及した『新・現代歴史学の名著』と一緒に買ってきたもの。「上奏」「奏上」「内奏」「密奏」などさまざまに表現される「奏」の実態や変遷を幕末から近年に至るまでの期間について論じるというもの。…

『新・現代歴史学の名著』

関連エントリ 「日中歴史共同研究」執筆者の「歴史認識」論 「説明」と責任(特に後半部分) 樺山紘一編著、『新・現代歴史学の名著』、中公新書 買ってきたばかりでまだ読んでない。ということで実はこの本についてではなく、上の「関連エントリ」で問題に…

『戦争は女の顔をしていない』

higetaさん経由で以下の記事を知る。 AFPBB News 2010年03月11日 「米議会、第2次大戦中の米軍女性パイロットを初表彰」 【3月11日 AFP】10日、第2次世界大戦終結から60年を経て、当時米空軍にパイロットとして従軍した女性たちが初めて、米議会で表彰された…

「検証 昭和報道」、「靖国参拝」の章

朝日新聞の夕刊で連載されている「検証 昭和報道」の「靖国参拝」の章(全6回)が終わりました。1985年の8月15日に行なわれた中曽根首相(当時)の靖国参拝時の報道について、次のように振り返っています。 当時の靖国関係の記事は、大半が政教分離をめぐる…

「日中歴史共同研究」執筆者の「歴史認識」論

1月末に報告書が公表された「日中歴史共同研究」において第2部第2章「日中戦争−日本軍の侵略と中国の抗戦」を担当した(共著)庄司潤一郎・防衛研究所戦史部上席研究官が『防衛研究所紀要』の第4巻第3号(02年3月)に「戦後日本における歴史認識 ―太平洋戦争…

シリーズ「戦争の経験を問う」

今日本屋に行ったら、こんなシリーズの第1回が刊行されているのを見つけました(多分新聞広告も出てたんだろうけど、見落としてた)。 「戦争の体験を問う」 全13巻 全部フォローするのはさすがにきついですが、できる限り触れて行きたいと思います。

「説明」と責任

ちょっと間があいてしまったが、先日のエントリで「別稿にて」と予告しておいた件について。 当該のエントリで『日中戦争の国際共同研究 2 日中戦争の軍事的展開』の「まえがき」から引用した文章の冒頭にある「そうした論争もあったにせよ」とは、具体的に…

「日中戦争の国際共同研究」

先日報告書が公表された、国家主導の「日中歴史共同研究」とは別に、日中戦争に関するアカデミズムベースの国際共同研究も存在しています。2002年と2004年に日中台米の研究者が参加して行われた国際シンポジウムが書籍化されています。 姫田光義・山田辰雄編…

「日中歴史共同研究」への識者評

「日中歴史共同研究」については案の定産経新聞が熱心に報じているので助かりますね。 【日中歴史研究】私はこう読む 現代史家の秦郁彦氏 「日本弾劾色」に変化 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100201/plc1002010010002-n1.htm 南京事件について…

誤植発見

例の「日中歴史共同研究」の報告書が発表され、オンラインでも読むことができるようになっています。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/rekishi_kk.html 南京事件に関する記述を含む章の担当者は波多野澄雄・庄司潤一郎の両氏です。脚注で中島今朝吾…

横浜裁判の一場面

machida77 さんや bat99 さんが『神を信ぜず』について紹介してくださっているので(表3、表4までw)、私も一つのエピソード(第一話「武士道裁判」に出てくるもの)を紹介しておきたい。 訴追された事件は次のようなもの。墜落したB29のパイロットの内7名…

「都市型社会と防衛論争」

http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20100102/p1 http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/mojimoji/20100102/p1 この↑問題との関連で。 松下圭一、「都市型社会と防衛論争」(1981年)、『戦後思想の歴史と思想』(ちくま学芸文庫)所収 現在、日本にみら…

「”国民”への道のり〜明治日本・農村の記録〜」ほか

ドラマ『坂の上の雲』やシリーズ「JAPANデビュー」を含むNHKの企画「プロジェクトJAPAN」の一本として年末30日に放映された「”国民”への道のり〜明治日本・農村の記録〜」を観る。 スペシャルドラマ「坂の上の雲」、第一部は、明治の初めから日清戦争の頃ま…

次なるターゲットは関東大震災時の朝鮮人虐殺?

こんな本が出たそうです。 工藤美代子、『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』 『SAPIO』に連載されていたとのことで、チェックを怠っていたことを後悔しています。版元のサイトなのに目次情報すらないのですが、連載時のタイトルは次のようなものでした(CiNi…

井上靖・中国行軍日記

以前にこのエントリで紹介した記事で報じられている小説家・井上靖の従軍日記が『新潮』12月号に「中国行軍日記」と題して掲載されています。 井上靖の本籍地(と思われる)静岡が名古屋の第三師管区に属しており、時期的にも日中戦争最初期であるためいろい…